幸せな組織
表題は「日経ビジネス2010年1月25日号」『ノーベル賞理論で考える「幸せな組織」会社は合理的にダメになる』の中にあった言葉です。「一人ひとりは優秀なのに、なぜ組織は不幸になり失敗するのか。昨年ノーベル経済学賞を受賞したウィリアムソン教授の理論で、組織が合理的に失敗する理由を解き明かす。」とあります。会社という組織がダメにならない為に大切な理論であり、大いに勉強したい内容です。ここでは私なりに解釈、抜粋してご紹介しますが、皆さんには是非全文を読んで頂きたい内容です。
《 限定合理的な人(限られた範囲内で最善を尽くし、合理的であろうと行動しながら学習し、より現実的な行動をする人)は、機会主義的な(隙あらば利己的に利益を追求する)行動をする。例えば会社組織内の役職員は、経済学が考えるように会社の利益を最大化しようとするだけでなく、密かに自分の個人的役得も最大化しようとする。人間がそのように限定合理的で機会主義であるとすると、知らない相手との交渉では、互いに駆け引きが起こり、相手を調べたり、弁護士を雇ったり、契約履行を巡って監視したりといった取引上のムダが生じることになる。そのムダのことを「取引コスト」と称したのがウィリアムソン教授である。もちろん,取引コストが発生するのは、知らない人との交渉取引だけではない。これまで常識とされていた方法や慣習を変える際に、知り合いと交渉する時にも生じる。変化を起こすためには、既存の人間的なしがらみや関係を断ち切る必要があり、その時に生じる精神的負担や、話の通じない頭の固い人たちを説得するのにかかる時間のムダと労力。それら全てが取引コストとなる。そしてこの取引コストが組織を不幸にする。このマイナス面を組織内における部下と上司の関係で見てみよう。一般に、上司よりも部下の方が市場の動きに敏感で、現実の動向に関してより正確な情報を持っている。今、市場が大きく変化しているため、それをいち早く感じた部下は、既存の製品を改良する必要があると強く考えているとしよう。ここで部下はそれを上司にすぐに進言できるであろうか。距離感がありすぎて直接話ができない、あるいは進言しても情報を握りつぶされてしまう、目立つと叩かれる、手柄を横取りされてしまうなど、信頼できない上司との取引コストがあまりに高い場合には、せっかく良い情報があっても、部下は口をふさいでしまうものだ。そして、こうした社内の取引コストが高い組織は変化できず、結局、市場で淘汰されてしまう。ウィリアムソン教授はこの取引コストを回避するのではなく、発生を抑えるために行動することが、結局組織にプラス効果をもたらすということを証明したのである。上司と部下の人間関係は、取引コストの観点から考えることで、納得感を伴いながら改善することができる。具体的には「ホンダのワイガヤ」や「ファミリーマートの上田社長の宴会部長ならぬ宴会社長」「アサヒビールのブラザー制度」また社内における運動会やゴルフ大会、ボーリング大会など社員のお互いのコミュニケーションの場作りなどがある。また日本企業独自の取引先との「ケイレツ」もウィリアムソン教授の研究において、取引コストの削減をすることで、お互いの経営に効果があるように示されている。企業を永続させるために必要なのは、会計上の経費削減に長けた経理の専門家だけではない。数字に表れず、目に見えない取引コストの節約能力に長けた、それゆえ人間関係をマネジメントできるリーダーもそれ以上に必要だ。人間関係にかかわる取引コストの増大はすぐには目に見えないがじわじわと組織を蝕んでいき、最終的に会計上に表れる物的な費用も増大させることになるからだ。組織を強くするには、取引コストがどこに隠れているのかを認識し、その削減の努力をすることが大事である。昨今、流行らなくなったが、企業内のクラブ活動や運動会など、コミュニケーションの仕組みを構築し、風通しを良くすることで、社員の満足度の向上や組織の活性化に繋げていく必要がある。つまり、組織を従業員が幸せを感じる風土に変革させる原動力がここにある。取引コストの在り方を認識し、それを節約するように人間関係をマネジメントすることが、組織を幸せにするカギなのである。 》
我々には、勉強しなければならないことがまだまだ山ほどありますね。組織内の一人ひとりのコツコツとした、一歩一歩の小さな日々の努力が最終的には大きな結果に結びつきます。今期、残り2カ月、精一杯頑張って暖かい春を迎えましょう。