何はともあれ 営業強化
表題はお世話になっている遠州信用金庫さんから送っていただいた「えんしんマンスリーリポート8月号」(企画制作株式会社タナベ経営)の題名です。副題を『計数より営業を分析せよ』としています。毎月送っていただいていますが、今月はKONOIKE第8期の最終月でもあり、また来期に向かって経営計画を見直す時でもありますので、私自身再確認したこととして、ここに紹介します。
《 「ともかく具体的に動いてごらん 具体的に動けば 具体的に答えが出るから」(相田みつを著【人間だもの】文化出版局)。もっとも、具体的に動くには、具体的な考えが先にならなければならない。抽象的な考えからは、抽象的な行動しか生まれない。そこから具体的な答えが出るはずもないのだ。企業は業績を上げようとするなら、具体的に何をすべきかの考えが必要である。 中小企業基盤整備機構が7月8日に発表した「東日本大震災に関わる影響調査」によると、中小企業796社(被災地域を除く)に震災後の開発・生産・販売の考え方を尋ねたところ、最も多い回答は「国内での新たな販売先の開拓」(44,5%)だった。続いて「新商品、製品開発を強化する」(30,1%)、「調達先の国内分散化を進める」(23,4%)が上位を占めた。一方「調達先を海外に求める」が7,9%、「開発生産拠点の一部を海外に移転」は3,0%にとどまっている。自由回答では「生産拠点は全部海外に移転する」「海外販売を強化する」などの声も散見されるが、大半の中小企業は国内を軸に開発・生産・販売戦略を組み立てていることがうかがえる。 この上位3つの回答に共通するキーワードは、「営業」である。1位の販売先開拓は勿論、2位の販売強化にしても、開発アイデアの種になる顧客ニーズは営業を通じて現場で拾い上げなければならない。開発に成功したら、それを売るのもまた営業である。3位の調達分散化も、裏を返せば新規受注のチャンスだ。今回の震災では、「ここを押さえればサプライチェーン全体を押さえられる」という隠れた中核企業の存在が明らかになった。特に自動車産業は、大手を頂点に裾野が広がるピラミッド型だと思われていたのが、実は末端に向かって特定調達先に集中して行く「ダイヤモンド型」だったことが分かった。そうした構造の産業、また特定調達先に依存する企業では、新規取引の窓が開いている。 何はともあれ営業強化である。なのに、営業戦略を練るはずの経営者が経営数値の分析に集中しているケースが多い。経理部長や顧問税理士としきりにひざを突き合わせて話し込んだり、社内の数字を毎日集計して自分で日時決算を作成する経営者もいる。勿論経営数値の把握と分析は大切である。自分の血圧や尿酸値が分からないのに、「高血圧だ」「痛風だ」と判断するわけにはいかない。しかし、計算と比較を繰り返しても経営が改善する保証はない。財務分析だけで経営改善ができるのなら、公認会計士は皆、一流経営者だ。ところが今は、会計・経理のプロである大手監査法人が赤字を出し、会計士の希望退職を募集している。財務分析と言っても、結局は過去の数字の加減乗除に過ぎない。 経営者が今、すべきことは、具体的に何を売り、誰が売り、どこに売るかを決めることだ。企業経営における最悪の費用は、物を売る費用でも、人を雇う費用でもない。作った物や仕入れた品が「売れない」という損失である。これを放置した計数管理など、数字合わせのパズルに過ぎない。計数を分析する前に営業を分析すべきである。社長は会計士ではない、「経営者」なのだ。 複雑な計算は、人間よりも電卓のほうが正確さと速さで勝る。だからと言って、電卓が人間より知性があるとは思わないはずだ。知性の持ち主はあなたである。その知性を販売の知恵に生かすことだ。 》
そのとおりです。経営者は 『何を』『誰が』『どこに』に売るかを決め、それを『いつまでに』成し遂げるか、の毎日でなければなりません。来期に向かっての最終月です。有終の美を飾り、来期の経営計画が実行可能かどうか、を早急に練り直したいと思います。